今回のテーマは 被写界深度は計算で求めることができる という蘊蓄。
被写界深度(DOF:Depth of field)とは
被写界深度とは、焦点が合っているように見える被写体前後の距離の範囲のことです。一般に、被写界深度は被写体の前方に浅く、後方に深くなります。前者を前方被写界深度、後者を後方被写界深度と呼びます。
イメージサークルと画角
レンズを通った光が結像する円形の範囲のことをイメージサークルと呼びます。このイメージサークルを角度で表したものがレンズの画角です。
許容錯乱円
焦点が合う範囲は厳密に言えば1点(ひとつの平面)だけです。 しかし、人間の目の解像度には限界があるので、本当はボケていても拡大しないと識別できないものは便宜上焦点が合っているものとみなします。このように実用上の焦点が合っている範囲を「許容錯乱円」と呼びます。
フィルムカメラ用レンズの許容錯乱円
主なフィルムフォーマットにおける許容錯乱円の大きさの一例を下表に示します。ただし、これはあくまで一例であってこの数値とは異なるものが使用されることもあります。たとえば、キヤノンの EF レンズの場合は許容錯乱円の大きさは直径 0.035mm に設定されていて、この値を基準に被写界深度などが算出されています。
サイズ | フィルムフォーマット | 撮像面サイズ | 許容錯乱円の直径 |
---|---|---|---|
小サイズ | APS-C | 22.5mm x 15.0 mm | 0.019 mm |
35mm | 36 mm x 24 mm | 0.026 mm | |
中判 | 645 | 56 mm x 42 mm | 0.043 mm |
6x6 | 56 mm x 56 mm | 0.049 mm | |
6x7 | 56 mm x 69 mm | 0.055 mm | |
6x9 | 56 mm x 84 mm | 0.062 mm | |
6x12 | 56 mm x 112 mm | 0.077 mm | |
6x17 | 56 mm x 168 mm | 0.109 mm | |
大判 | 4x5 | 102 mm x 127 mm | 0.100 mm |
5x7 | 127 mm x 178 mm | 0.135 mm | |
8x10 | 203 mm x 254mm | 0.200 mm |
(原典:Wikipedia)
デジタルカメラ用レンズの許容錯乱円
デジタルカメラになってからは等倍で画像を見ることがごく普通のことになったこともあって、フィルム時代の許容錯乱円の大きさのままでは焦点が合っているものとみなすことが難しくなってしまいました。デジタルカメラ用に設計されたレンズでは、フィルム時代の許容錯乱円の大きさよりもさらに小さな値が採用されているようです。
被写界深度は計算できる
被写界深度は、カメラのセンサーサイズ、レンズの焦点距離、レンズの絞り値、被写体までの距離が分かれば計算で求めることができます。前方被写界深度および後方被写界深度はそれぞれ次の式で計算することができます。
なお、下記のサイトに被写界深度に関する詳細な解説があります。より詳細な技術解説をお知りになりたい方は参考になさってください。
被写界深度の計算ができるウェブサイト
被写界深度の計算をするスマホのアプリもありますが、ここでは Web で計算できるサイトを2つ紹介しておきます。
カメラの被写界深度の計算
カメラの被写界深度の計算を行うことができます。(許容錯乱円径の欄は初期値0.03mmのままでも大丈夫です。)
被写界深度計算機(DOF Computer)
前後2つの被写体のボケ具合を画像でシミュレートできます。 *1