レンジファインダーカメラは、いわゆる三角測量によって被写体までの距離を測定してレンズの距離環に反映させる方式をとっています。したがって、一眼レフのように実際に結像をみてフォーカスを合わせているわけではないので、経年変化等でレンジファインダーにズレが生じていたり、使用するレンズの距離環との誤差があったりすると、ファインダーで二重像を合致させてもフォーカスが外れた写真になってしまうことがあります。
このような場合には、レンジファインダー(距離計)のミラーの角度を調整することでフォーカスが合うようにする必要があります。ファインダーの二重像のズレには縦像のズレと横像のズレがありますが、フォーカスに影響するのは主に横像のズレです。
本稿では横像のズレを調整する方法について簡単に取り上げます。より詳しい解説については巻末に参考 URL を添付しますのであわせてご覧ください。また、ご自身で調整・修理が難しいとお感じになった方のために、クラカメの修理店(主に関東周辺)のリンクも掲載しておきます。
バルナックライカのフォーカス調整
ここでは、レンジファインダー機の元祖ともいうべきバルナックライカ型のカメラについて距離計(レンジファインダー)の横像のズレを調整する方法を解説します。
バルナックライカ型のレンジファインダーカメラには、距離計のミラーの角度を調整する機構が付いていて、マイナスドライバー2本(極小の時計用ドライバー)で調整が可能です。
フェイクライカのフォーカス調整
ここでは、バルナックライカのコピーであるフェイクライカ(FEDベース)を使って具体的な手順を示します。
- カメラの正面向かって右側のファインダーの左側にあるビス(マイナスねじ)を外します。小さなビスなので紛失しないように注意してください。
- ビスを外すと中に調整用のマイナスねじが現れます。小さなマイナスドライバーを使ってこのネジを左右に回すことで、二重合致像の横像のズレ(=合焦距離)を調整することができます。
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レンジファインダー機のフォーカス調整はレンズを無限遠の状態にしてフォーカスが合うようにするのが基本です。無限遠でピントが合えば近接撮影で多少ピントが外れてもかまわない、という割り切りが大切です(笑)。*1
- フォーカス調整のより詳しい解説は、本稿巻末の参考 URL をご覧ください。
本物のバルナックライカのフォーカス調整
本物のバルナックライカのフォーカス調整の方法は、フェイクライカと全く同じです。ここでは、調整用のネジの位置だけご覧ください。
その他のレンジファインダー機のフォーカス調整
その他のレンジファインダー機の例として RICOH S-3 の写真を掲載しておきます。距離計調整用のネジは同じ場所にあります。
ミラーを使っていないレンジファインダー機の例
レンジファインダー機の中には距離計にミラーを使わない機種もあります。Zeiss Ikon Contessa 35(通称:貴婦人)はその代表例で、ドレーカイル式連動距離計と呼ばれる、それぞれ逆方向に回転する2つのくさび形プリズムを使用した距離計を搭載しています。バルナックライカのように距離計にミラーを使用していないので経年変化によるミラーの角度のズレは発生しません。
【参考URL】
バルナックライカのフォーカス調整
その他のカメラのフォーカス調整
クラカメ修理専門店
脚注・コメント
*1:近接でフォーカス調整をした場合、調整を行ったレンズ以外ではフォーカスが外れる可能性が高いです。